2020年05月31日

They Don't Care About Us を超意訳する

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朝起きてインスタ開いたら飛び込んできた、おなじみ…だったはずの歌詞

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#THESHOWMUSTBEPAUSED

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僕の権利はどうなってるんだ
お前が無視する限り 存在しないのか
憲法では自由と解放が保障されてるじゃないか
侮辱されるのはもうたくさんだ
僕は「悪者リスト」に放り込まれた
こんな所が僕の故郷だなんて 到底納得できない
本当はこんなこと言いたくないんだけど
政府は目を背けている
もしルーズベルトが生きてたら
この状況を放っておかなかっただろう


They Don't Care About Usが政府、警察、司法などの腐敗に対する抗議の歌であると頭では分かっていた。
でも軽快な曲調、鮮やかな言葉遊び、Brazil Versionショートフィルムの美しい光景のイメージが強くて、その裏にある強い怒りがオブラートに包まれていた。
こうやって活字だけを読むと、今まで感じたことのない強烈な悲痛を感じてたまらなくなり、全部の歌詞と"Prison Version"のショートフィルムを見直した。

インスタでこの歌詞が投稿された理由は、アメリカで一人の黒人が警察に残虐な暴行を受け殺されたことをきっかけに、全米で抗議デモが広がっている現状に応えるためだろう。
この問題は今に始まったことではなく、以前から酷いケースが至る所で報告されている。
マイコーも警察の取り調べを受けた時、命の危機までは感じなかったかもしれないが、醜い憎悪、侮辱、権利の侵害を目の当たりにしたのだろう。

直訳とは程遠いし、オリジナルのすばらしい押韻を再現することはできないが、マイコーの意図を最大限汲み取った翻訳をしてみる。
加えて、"skin head"について、放送が控えられたショートフィルムについて、リリース後に「ユダヤ人差別」と論争を産み、結局マイコーが謝罪と修正することになった歌詞について書いていきます。

訳詞


All I want to say is that they don't really care about us
要するにやつらは僕らのことなんてどうでもいいんだ

Don't worry what people say, we know the truth
人の言うことは気にするな 僕たちは事実を知ってるんだ

Enough is enough of this garbage
ゴミみたいな世の中にはもう耐えられない

Skin head, dead head, everybody gone bad
間抜けなレイシストども 全員腐ってやがる

Situation, aggravation, everybody, allegation
状況は悪化 みんな告発する

In the suit, on the news, everybody, dog food
法廷で ニュースで 全員犬の餌

Bang bang, shot dead, everybody's gone mad
バンバン 銃殺 どいつもこいつも狂ってる

All I wanna say is that they don't really care about us
要するにやつらは僕らのことなんてどうでもいいんだ

Beat me, hate me, you can never break me
殴ったって 憎んだって 僕は絶対壊れない

Will me, thrill me, you can never kill me
指図しても 脅しても 僕は殺せない

Jew me, sue me, everybody do me
金をふんだくり 訴えて みんな僕を騙そうとする

Kick me, kike me, don't you black or white me
蹴り上げ 侮辱する 僕を裁くな

All I wanna say is that they don't really care about us
要するにやつらは僕らのことなんてどうでもいいんだ

Tell me, what has become of my life?
僕の人生に何が起こったか説明してくれよ

I have a wife and two children who love me
愛してくれる妻と子供が二人いるのに

I am the victim of police brutality, now
今は警察から残忍な暴行を受けている

I'm tired of being the victim of hate
憎しみの犠牲になるのはもうたくさんだ

You're ripping me of my pride, oh, for God's sake
お前は僕の尊厳を打ち砕く ああなんてこった

I look to heaven to fulfill its prophecy, set me free
神の預言が実現するのを願い 天を仰ぐよ 自由にしてくれ

Skin head, dead head, everybody's gone bad
間抜けなレイシストども 全員腐ってやがる

Trepidation, speculation, everybody, allegation
不安な憶測 みんな告発する

In the suit, on the news, everybody, dog food
法廷で ニュースで 全員犬の餌

Black male, blackmail, throw the brother in jail
黒人を恐喝し 仲間を刑務所に放り込む

All I wanna say is that they don't really care about us
要するにやつらは僕らのことなんてどうでもいいんだ

Tell me, what has become of my rights?
僕の権利はどうなってるんだ

Am I invisible 'cause you ignore me?
お前が無視する限り 存在しないのか

Your proclamation promised me free liberty, now
憲法では自由と解放が保障されてるじゃないか

I'm tired of being the victim of shame
侮辱されるのはもうたくさんだ

They're throwing me in a class with a bad name
僕は「悪者リスト」に放り込まれた

I can't believe this is the land from which I came
こんな所が僕の故郷だなんて 到底納得できない

You know, I really do hate to say it
本当はこんなこと言いたくないんだけど

The government don't wanna see
政府は目を背けている

But if Roosevelt was livin'
もしルーズベルトが生きてたら

He wouldn't let this be, no, no
この状況を放っておかなかっただろう

Skin head, dead head, everybody's gone bad
間抜けなレイシストども 全員腐ってやがる

Situation, speculation, everybody, litigation
事態を憶測し みんな訴訟をおこす

Beat me, bash me, you can never trash me
殴っても 乱暴しても 僕を葬ることはできない

Hit me, kick me, you can never get me
叩いても 蹴っても 僕は手に入らない

All I wanna say is that they don't really care about us
要するにやつらは僕らのことなんてどうでもいいんだ

Some things in life They just don't wanna see
やつらが認めたがらないことがいくつかある

But if Martin Luther was livin'
でもマーティンルーサーが生きてたら

He wouldn't let this be, no, no
これを放っておかなかっただろう

Skin head, dead head, everybody's gone bad
間抜けなレイシストども 全員腐ってやがる

Situation, segregation, everybody, allegation
人々は分裂し 全員が告発する

In the suit, on the news, everybody, dog food
法廷で ニュースで みんな犬の餌

Kick me, kike me, don't you wrong or right me
蹴り上げ 差別する 僕を裁いたりするな

All I wanna say is that they don't really care about us
要するにやつらは僕らのことなんてどうでもいいんだ

解釈の分かれる歌詞


情報源によって若干歌詞の記載が違う所があります。私は文脈的に自然だと思うほうを採用してます。

"In the suit, on the news" vs "In the suite, on the news"
"Bang bang, shot dead" vs "Bang bang, shock dead"
"You're ripping me of my pride" vs "You're raping me of my pride"

suitに関しては文脈的にスイートルームより法廷のほうが自然でしょう。
その他の二つはどっちでも変わらない。

"skin head"には「ファシズム、レイシズムを信奉する(不良)の若者(狭義ではネオナチの少年など)」という意味があるらしい。(今日知った)
その他にも色々なグループ(ヒッピーに関連してたり、逆に人種差別を非難する人達など)の人を指す意味があり、センシティブなので、あまり気軽に使わない方が良さそう。
スキンヘッドと言いたい時は"Bald"と言う方が無難なようです。

"dog food"もスラングかなと思ったのですが、当てはまる情報が見当たりませんでした。
コンピューター業界の用語で、自社のソフトウェアがちゃんと動作するか社員が試しに使ってみることを"dog fooding"と言うらしいけど関係ないよね。。

2種類のショートフィルム


youtubeでは現在どちらも公式に閲覧できます。

Prison version


Brazil version


Prison versionでは虐待や暴力を直接記録した映像を交えて、マイコーと共に怒りをあらわにする囚人たち(アジア人もたくさんいる)を映している。
怒りのあまり給食をひっくりかえしている。
この曲のメッセージにリンクしているショートフィルムはこちらの方だろう。
だが色々と問題があり(多分ショッキングすぎるという理由)ほとんどお蔵入り状態で長い間公開されなかった。
マイコーは不本意だったと思う。ファンも怒っていた。
でも音楽は基本的にエンターテイメントだ。ドキュメンタリーや教育目的の映像ならともかく、家で楽しもうと思ってMTVつけてこの映像を見せられるのはキツいのでしょうがないかなと思う。
オフィシャルに公開されたのはBrazil Versionの方。
美しい街の風景と活気あふれる地元の人々、マイコーのキレキレダンスが映える。
撮影場所の「サルヴァドール」にもかなり壮絶な背景があるのだが、背景知識がないとそこまで伝わらない。
暗い歴史よりもポジティブなエネルギーを感じる。
個人的にはこちらの方が好きだ。幸せをくれる。
マイコーのめずらしいジーンズ姿。腰細い!! Tシャツインしてるのにめちゃかっこいい!!!
こんなふうにカッコよくジーンズを履ける自信は一生ない(笑
あとドラム隊の映像が音楽にバッチリ合ってる。

ユダヤ人差別問題


二つの単語 "jew"と"kike" が大きな波紋を呼びました。
"Jew"はそもそも「ユダヤ人」という意味ですが、動詞では「ずる賢く抜け目のない値段交渉を行う」という意味となります。つまり「ユダヤ人の商人は金に汚い」という偏見が元になっているため差別的で使うべきでない言葉です。
"kike"は「ユダヤ人」「ユダヤ人の」という意味で、正式には動詞ではありません。この単語自体が差別用語とされています。語源ははっきり分かりませんが、あるグループのユダヤ人の名前が"ki""ky"で終わることが多いという説と、アルファベットが書けないユダヤ人がサインの代わりに○(kikel)を書いたことなどが由来とされています。
https://www.etymonline.com/search?q=kike (参考サイト)

最初は批判に対してマイコーも抗議していましたが、結局このワードを封印してレコーディングしなおすに至りました。マイコーはこのような声明をだしています。

There has been a lot of controversy about my song, ‘They Don’t Care About Us.’ My intention was for this song to say ‘No’ to racism, anti-Semitism and stereotyping. Unfortunately, my choice of words may have unintentionally hurt the very people I wanted to stand in solidarity with. I just want you all to know how strongly I am committed to tolerance, peace and love, and I apologize to anyone who might have been hurt.


私の曲 "They Don't Care About Us"についてたくさんの議論がなされました。私の意図は、人種差別、反ユダヤ主義、ステレオタイプに "No" と言うことです。残念ながら私の言葉の選択により、まさに共に立ち上がりたいと考えていた人々を意図せず傷つけてしまったかもしれません。私が寛容、平和、愛にとても強く尽力していることを全ての人々に分かっていただきたい。そして傷つけてしまった全ての人に謝罪したい。



posted by 蒼いありんこ at 18:49| Comment(1) | マイコー雑記